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TEL.011-706-2596

〒060-0812 札幌市北区北12条西6丁目
北海道大学中央キャンパス総合研究棟2号館4階205号室

研究概要research

匂い空間分布情報処理についての研究

 匂いは定まった形をとらず、その空間分布は時々刻々と変化します。そのため、動物は匂いの位置情報を検出する手段を持たないとみなされてきました。事実、同じ匂い受容体を発現する感覚細胞群の軸索は一次嗅覚中枢内の1個の糸球体に収束し、文字通り毛糸玉のような構造を形成します。ところが、我々はワモンゴキブリの長い触角(5 cm)全域に分布している嗅感覚細胞の軸索が触角内での基部〜先端での細胞体の位置によって糸球体内で層状に組織化されていること(図2)、この投射パターンがゴキブリの幼虫期の脱皮を通じて徐々に形成されることを動物で初めて発見しました。さらに細胞内記録・染色法により、大糸球体から出力する11本の介在ニューロンの各々が触角の基部〜先端の特定領域の刺激に応じること、嗅感覚細胞の投射領域と介在ニューロンの樹状突起が糸球体内に占める領域の間に明瞭な相関が存在することを明らかにしました(図1)。

 視覚情報処理と同様、興奮性受容野の外側は抑制性受容野になっており、刺激の形状を高コントラストで検出するのに寄与します。介在神経で処理されたフェロモン情報はキノコ体と側角と呼ばれる2つの高次中枢に送られますが,キノコ体では異なる介在神経の軸索終末が空間的に明瞭に隔てられている一方,側角ではほぼ完全に重複していました(図3)。このことはキノコ体内の異なる神経が異なる空間情報を処理する可能性を強く示唆します。ゴキブリは夜行性で、交尾相手の発見を嗅覚のみに依存するため、匂いの分布を見るように検出するしくみを進化させてきたのでしょう。本研究は動物の匂いの空間分布処理を理解する上で最適のモデルシステムを提供するものです。
実験成果の紹介はこちら↓
匂いのかたちを捉える神経を発見


図1.触角局所に受容野を持つ介在ニューロンの樹状突起

図2.大糸球体にみられる求心線維の層構造。          図3.S1とS7の全像と応答曲線
   タマネギを2つ割にしたような構造で、
   触角の先端に由来する繊維は黄色の層に、
   最基部由来の繊維は青色の層に投射する
  (画像提供:上村逸郎)


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