

- 先生の研究の全体像を教えてください
- 本研究テーマに取り組むことになったきっかけは何ですか?
- この研究の最大の特徴・強みとは何でしょうか?
- 今後どのような分野へ広がりや社会展開の可能性が期待できますか?
- 若手研究者・学生・社会へのメッセージ
先生の研究の全体像を教えてください
私は、有機分子を半導体材料として利用する「有機光エレクトロニクス」の研究に取り組んでいます。有機分子は一般には電気を通さない絶縁体と考えられていますが、分子構造を精密に設計することで半導体として機能させることができます。さらに、有機分子は非常に優れた発光特性を持つことから、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)素子として実用化され、現在ではスマートフォンやテレビのディスプレイなど、私たちの身近な製品にも広く使われています。
私たちの研究室では、有機分子が持つ多彩な機能を最大限に引き出し、新しい光デバイスを創出することを目指しています。物性物理に基づく基礎研究から、社会実装を見据えた応用研究までを一貫して進めていることが特徴です。最近では、センシング用途を指向した「近赤外有機EL素子」や、有機分子の量子状態を利用した「光冷却素子」など、これまでにない機能を持つ新しいデバイスの研究にも取り組んでいます。

本研究テーマに取り組むことになったきっかけは何ですか?
私は学生時代から一貫して、有機光エレクトロニクスの研究を続けてきました。特に、有機EL素子の高性能化と社会実装に向けた研究に取り組み、その成果の一部はディスプレイ技術として実際に利用されています。現在、有機ELディスプレイは社会の中で広く普及しています。そうした状況の中で、有機ELの次の可能性を切り拓く研究を進めることが、研究者としての役割ではないかと考えるようになりました。そのため、すぐに実用化される研究だけでなく、将来の新しい技術につながるような挑戦的なテーマにも積極的に取り組んでいます。
この研究の最大の特徴・強みは何でしょうか?
私たちの研究の特徴は、有機ELの発光メカニズムに関する基礎研究と、デバイス応用の研究の両方を強みとしている点です。例えば、一般的な蛍光分子をほぼ100%の励起子生成効率で発光させる有機EL動作機構の研究や、精密な温度計測技術など、独自の研究基盤を築いてきました。また、研究室には物性物理、光学、半導体デバイスといった異なる分野を専門とする研究者が集まっています。それぞれの視点から議論を重ねることで、新しい発想や研究の広がりが生まれることも、私たちの研究の大きな強みだと考えています。

今後どのような分野へ広がりや社会展開の可能性が期待できますか?
今後の社会では、あらゆる情報をセンサーで取得し、それをビッグデータとして活用する「トリリオンセンシング社会」が進んでいくと考えられています。
そのような社会では、センシング用半導体デバイス、とりわけ光源として機能するデバイスの重要性がますます高まるでしょう。私たちは、有機半導体材料のユニークな特性を活かし、こうした社会に貢献できる新しいデバイスの創出を目指しています。
また、持続可能な未来社会の実現に向けては、超低消費電力技術の確立も重要な課題です。半導体素子の冷却や空調には膨大なエネルギーが使われており、その省エネルギー化は喫緊の研究課題となっています。現在取り組んでいる光冷却素子の研究は、将来の超低消費電力社会の実現にもつながる可能性を秘めています。

若手研究者・学生・社会へのメッセージ
研究の醍醐味は、新しい現象や物性を発見する瞬間にあります。もちろん、予想通りの結果が得られたときの達成感もありますが、私が最もわくわくするのは、予想とは異なる結果が現れたときです。一見すると失敗のように思える結果であっても、そのデータを丁寧に観察し、考え続けることで、新しい発見につながることがあります。若い研究者や学生の皆さんには、失敗を恐れるのではなく、そこから学びながら研究そのものを楽しんでほしいと思います。








