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研究者インタビュー#2 中垣俊之 教授

先生の研究の全体像を教えてください

複雑環境下での原生生物の行動を調べています。原生生物とは、真核生物のうちで動物や植物や真菌類を除いたものです。単細胞性のものから多細胞性のものまで多様な形態と運動性を示す生物群です。よく知られた具体例として、アメーバ、ゾウリムシ、ミドリムシなどがあげられます。複雑な環境では、どのような行動を取るとよいかは、はっきりしません。ジレンマやややこしい状況、突発的なイベントもあるでしょう。そんな野外環境で、原生生物は何億年も生き延びてきたので、原生生物なりの単純ではあるが案外そこそこ上手にはたらく行動規則をもっていると思われます。そんな潜在的な行動能力を探索し、その行動の背後にある情報処理アルゴリズム(ヒューリステクス)を解明しています。いわば、生命の知的なるものの根源的を探求しています。そのための方法として、野外観察(フィールドワーク)や実験室内での複雑人工環境実験、環境と行動の相互作用解析(数理モデリング)、情報科学の観点から行動制御アルゴリズム(ヒューリスティクス)の抽出を用いています。

Vampyrella sp.
藻類を捕食するアメーバ状の原生生物。色素などは持っていないが、消化した藻類の色素によってオレンジ色をしているように見える(白矢印)。学名は吸血鬼にちなんでおり、アオミドロ(赤矢印)など餌となる藻類の細胞壁に穴をあけて中身を吸い込んで捕食する。
Prorodon spirogyrophagus
ゾウリムシなどが属する繊毛虫の仲間(白矢印)。繊毛虫では珍しくアオミドロ(赤矢印)を主に捕食する生物であり、アオミドロをそのまま飲み込んで消化するという変わった生態を持っている。種小名はこの種が特異的にアオミドロを捕食することに由来している。
Stentor igneus
ラッパムシは名の通りラッパ型をしている繊毛虫で、写真の種は赤い色素を持つ珍しい種である。ラッパムシには色素を持つ種が多く、青い色素を持つソライロラッパムシ、紫の色素を持つS. amethystinusなどがいる。種小名は火のような色をしていることから由来している。

本研究テーマに取り組むことになったきっかけは何ですか?

マロン酸を臭素で酸化する化学反応であるベローソフ-ジャボチンスキー反応でみられる化学波動(回転らせん波動)や、液体の対流現象でみられるべナール対流パタン形成など、物理的な自己組織化現象の不思議さに魅了されて、細胞の活動性を物理的な観点から見るようになりました。このような考え方は、1970年ごろから活発化していて、ちょうど私が学生時代を過ごした80年代にはちょっとしたブームでした。

この研究の最大の特徴・強みは何でしょうか?

細胞運動の研究は現代生物学の主要なテーマの一つに挙げられるでしょう。私たちは、その発展として、環境の複雑さを導入することで行動ヒューリスティクスの探究へと道を拓いてきました。

今後どのような分野へ広がりや社会展開の可能性が期待できますか?

生態系の重要な一員である原生生物の行動を理解するということから、地球環境維持の根本的な理解に貢献しています。また、生物の行動に見る知的なるものの根源についての理解を独自に深めていることから、従来の生命観を問い直すことにもつながっています。

若手研究者・学生・社会へのメッセージ

研究内容は、自分の見識次第でどれだけでも面白くしてくことができるものだと思います。流行の影で忘れさられている大事なことをそっと拾い上げ、オープンマインドで多くの人々と研究交流して、自分の殻をうちやぶって脱皮を繰り返し、独自の学問的境地に向かってゴー! グッドラック!

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