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電子研について

2008年外部評価報告書

平成20年5月

Ⅰ 外部評価委員名簿

評価委員( 5 名)

(敬称略 50音順)
独立行政法人 科学技術振興機構 審議役 臼井 勲
財団法人 国際高等研究所 所長 金森 順次郎(委員長)
名古屋大学大学院医学系研究科 教授 曽我部 正博
松下電器産業株式会社中尾研究所 総括担当参事 高尾 正敏
千葉大学大学院融合科学研究科 教授 西川 惠子

Ⅱ 外部評価資料一覧

  1. 資料画像
    電子科学研究所概要
  2. 資料画像
    平成15年度外部評価資料 — 電子科学研究所の挑戦 — 平成9~14年度の取組みと評価
  3. 資料画像
    外部点検評価資料 平成15-18年度
  4. 資料画像
    個別評価結果のまとめ (平成15年度外部評価用別添資料)

Ⅲ 評価と提言

1.研究所の将来構想

 最初に、電子科学研究所が、大学の法人化の時期に行われた前回の外部評価の提言を真摯に受け止めて、生命科学分野の増強などを含め、確実に実行に移し、法人化以降様々な努力を行ってきたことを高く評価する。また昨今の、学術審議会が提起した研究所の役割・機能の明確化等の動きなど、電子科学研究所の将来計画にさらに大きく影響を及ぼす課題に対しても、着実に対応していることを評価したい。
 大学に於ける研究所の役割は、第一に学部・大学院と異なる角度から特色のある研究を推進して、大学および社会の発展に貢献することであろう。学部・大学院が一定のdisciplineを基盤として研究教育を展開する役割を担っているのに対して、研究所は、区分を超えた異なるdisciplineに基づく知の交錯(cross-discipline)を可能にし、研究における課題解決だけでなく、将来の発展を担う人材の育成にも資することができる。さらに、異分野の知の交錯の機能の延長として、大学と外部とのインターフェイスという機能も研究所が担うべき役割の一つであろう。しかし、研究の推進が要求する研究方向の集中と、一方cross-disciplineとインターフェイスという役割が必要とする多様性をどのように調和させるかは、今後の研究所将来計画策定の重要な課題である。
 電子科学研究所の将来の発展の方向は多岐に亘り、相互に矛盾する要素も含んでいるので、その一方向だけを取り上げて今後の推進強化を云々することは適切ではない。また、現在までの研究の個々のアクティビティについては、別途行われた外部評価が示すように高く評価することができる。しかし、複合領域ナノサイエンスを縦、横にとらえる研究の理念のキーワードとして提示された光、分子、生命、数理については、それから引き出される研究方向と対象は極めて多様である。とくに、光、数理を研究方向を特徴付けるキーワードとして理解したとき、後者については、学内の大学院研究科等との連携体制も整備され、実績の裏づけによって方向性もかなり明瞭であるが、光については、以下のことを参考意見として述べたい。この分野では、電子科学研究所は情報、イメージング、計測、機能素子等それぞれの分野で現に実績をあげている。しかし、研究分野全体は、横糸のみならず縦糸的要素もあるので、将来構想においては、光科学コミュニティでの電子研のリーダーシップの発揮にも繋がる戦略・企画が必要であると思われる。競争的資金によるプロジェクト研究においては、成果が出やすい個別的テーマが中心になり勝ちであるが、より基礎的な新規光学技術の開発にも期待したい。この場合は特定の研究室のみのアクティビティに期待するのではなく、電子科学研究所全体として特別経費を要求するなどの取り組みも必要であろう。その際、後の6.組織・運営と管理の項で述べるように、外部からの意見を取り入れる工夫をすることが望ましい。
 電子科学研究所は限られた規模でナノ複合領域すべてをカバーできないことは自明であって、その将来構想で学内外の諸研究組織との連携を中心課題とされていることは極めて適切である。生命(Life)という研究対象を取り上げても、強化されたとはいえ、生物の多様な機能の研究を包含する必要性が感じられるが、これを医学研究科等の学内連携の緊密化で対応されていることを評価する。また、分子(Materials)についても同様な努力がなされていると理解する。ただし、この評価は将来これらの分野を研究所にさらに強化することを除外するものではない。

2.ネットワーク型中核研究所としての役割

 研究所が取り組んでいるネットワーク型中核研究所構想の大学附置研究所間連携の部分については、幾多の制度上の障害を乗り越えて、他大学研究所にアライアンス研究室を設置し、大学院生を含む研究室単位での移動を実現された実績を高く評価する。これが研究推進の上での学問的な必要性に基づくものであることも、計画段階としては十分に検討されているという印象をもったが、今後の成果によってその先見性が実証されることを大きく期待したい。ただ、ナノテクノロジーの中心課題であるポストシリコン物質・デバイス創製基盤技術研究の全国的な展開を一層効果的に推進するためには、さらに他の有力な研究拠点との連携強化に努める余地が残されているという印象である。
 理化学研究所中央研究所および海外研究機関との連携についても、同様に革新的なシステム創造を着実に推進されていると評価する。

3.創成科学研究機構における役割(学内ネットワーク)

 現在進められている機構の改組の構想全体について十分把握していないが、その名称から、全学の研究機能を対象に新分野創成を目指しているものと理解した上で、その運営に際して電子科学研究所が重要な役割を担うべきものと考える。また、それが電子科学研究所にとっても自らではカバーしきれない隣接分野との協力・相補関係の推進に大きく貢献するものとなることを期待する。後に述べる大学院各研究科と研究所・センター群に共通した問題について、全学的な処理原則等が策定実行される場が形成されれば大きな意義をもつであろう。

4.地域連携における役割(学内・地域ネットワーク)

 ナノテクノロジー研究センターおよびニコンバイオイメージセンター等の活動により、学内外、地域内外から数多くの利用・問い合わせが寄せられ、また”異分野交流の場”としても機能しつつあり、地域連携における中核的研究機関の役割を十分に果たしている。今後は研究所アライアンスを活用され、その活動を全国的視野で発展させることが望ましい。

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