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非線形主成分分析による大自由度カオス力学系の縮約

掲載日:
講演会
日時 平成22年2月4日(木) 17:00–18:00
場所 電子科学研究所 1階 セミナールーム2
講演者 末谷 大道
所属等
  • 鹿児島大学大学院 理工学研究科
  • JST さきがけ「脳情報の解読と制御」
  • 理化学研究所 基幹研究所
タイトル 非線形主成分分析による大自由度カオス力学系の縮約
概要

リミットサイクルや少数自由度カオスなど、低次元の非線形力学系が示すダイナミクスは、自然界の様々な現象の背後にある普遍性を理解するための概念を数多く与えて来た。しかし、現実の流体や神経発火、概日リズム、歩行運動などを定量的に記述する数理モデルの多くは大自由度力学系として記述され、リミットサイクルのような秩序的な運動でも状態点は高次元の空間に分布している。この様な大自由度の系を予測したり外部から予測するための方法論を提示することは、非線形科学で得られた知見を現実の問題に展開する上でとても重要である。

高次元空間に分布するデータの自由度を縮約し低次元の空間に可視化する方法として、主成分分析などが古くから知られている。さらに、データが持つ非線形構造を抽出する方法として、isomapや locally linear embedding、ラプラシアン固有マップ[1]などの多様体学習と呼ばれる一連のデータ解析手法が近年発展している。これらの手法の幾つかは、主成分分析をカーネル法の枠組みで非線形化したカーネル主成分分析として統一的に定式化することが出来る[2]。

本講演では、多様体学習等の非線形の主成分分析を用いて複雑現象を理解する試みとして、Kuramoto-Sivashinsky方程式が示す時空カオス現象[3]を解析した結果について報告する。Poincare断面上のデータに適切な非線形の座標系を与えられ、冗長な自由度を除いた写像関係が抽出されることを示す。さらに分岐現象の観察や不安定周期軌道の検出などへの応用についても議論する。

参考文献
  1. J.B. Tenenbaum, V. de Silva, and J.C. Langford, “A Global Geometric Framework for Nonlinear Dimensionality Reduction”, Science Vol. 290, 2319 (2000); S.T. Roweis and L.K. Saul, “Nonlinear Dimensionality Reduction by Locally Linear Embedding”, Science Vol. 290, 2323 (2000); M. Belkin and P. Niyogi, “Laplacian Eigenmaps and Spectral Techniques for Embedding and Clustering”, in Advanced in Neural Information Processing Systems Vol. 14, 585 (MIT Press, 2002).
  2. 赤穂昭太郎 「カーネル多変量解析ー非線形データ解析の 新しい展開」(岩波書店, 2008).
  3. F. Christiansen, P. Cvitanovic, and V. Putkaradze, “Spatiotemporal Chaos in Terms of Unstable Recurrent Patterns”, Nonlinearity Vol. 10, 55 (1997).
主催 電子科学研究所学術交流委員会
連絡先 小松崎 民樹 分子生命数理研究分野 (内線 9434 )
備考等
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