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鉄系超伝導体の特徴と線材化

掲載日:
講演会

8月23日(木)に下記の講演会(主催:応用物理学会北海道支部)を開催致します。多数の方々が御参加下さいますよう御案内申し上げます。なお、神原先生は、「物質・デバイス領域共同研究拠点」事業の一環で、8月22日、23日の間来所されております。よろしくお願い致します。


日時 平成24年8月23日(木)11:00 – 12:00
会場 電子科学研究所新棟1F会議室
演題 鉄系超伝導体の特徴と線材化
講師 神原陽一 先生 (慶應義塾大学理工学部准教授)

講演要旨 :

2008年2月における鉄系高温超伝導体の発見[1]から現在までに, 類似の構造を有する新しい超伝導体の発見が続いている. これらの物質群における最高の超伝導転移温度(Tc)は, 銅酸化物に次ぐ高い値である55 Kに上る. 鉄系高温超伝導体を主題とした原著論文数は約3000報に及び, 2008年以前は銅酸化物に限られていた高温超伝導の基礎・応用研究の対象は大きく広がった.[2]

これまでに報告された鉄系高温超伝導体は, 一部の例外を除き, いずれも鉄の正方格子を有している. 最高のTcを示すLnFeAsO1-xFx (いわゆる1111系)の母相は反強磁性金属であり, その結晶構造は低温で斜方晶に転移する. 1111系はフッ素, 酸素欠陥導入, 結晶内への水素導入によりFeの磁気モーメントが消失した化学組成にて有限のTcが出現する. このような反強磁性体への異価数イオンドープにより引き起こされるTcの出現は銅酸化物高温超伝導体と同一の特徴である.

鉄系高温超伝導体を使用した線材は, 上部臨界磁場及び臨界電流密度(Jc)に優れた1111系とBaFe2As2を母相としたいわゆる122系を中心に試作が行われおり, Powder in tube法と呼ばれる簡単な方法で線材化可能である. 122系を用いた線材では4 K でJc ~ 105 A/cm2を超えており, この値はバルク性能の数%程度に上る. [3] 一方, 1111系は粒間のJcが小さいため122に比べて二桁程度小さいJcに留まっている. 当日は鉄系超伝導体に対する一般の評価についても言及する.

図1 : 超伝導転移温度の年推移

[1] Y. Kamihara, et al, J. Am. Chem. Soc. 130, 3296 (2008).
[2] G. R. Stewart, Rev. Mod. Phys. 83, 1589 (2012).
[3] J. D. Weiss, et al, Nat. Mater. 11, 1 (2012).
[4] M. Fujioka, et al, Appl. Phys. Express 4, 063102 (2011).

上記の通り講演会を開催致しますので、皆様奮ってご参加下さい。

主催:応用物理学会北海道支部
連絡先:海住英生 (内線9425) 、近藤憲治(内線9424) 、石橋晃
ナノ構造物性研究分野
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