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鉄系混合アニオン化合物超伝導体の電子磁気状態相図と応用

掲載日:
講演会
日時 平成27年12月3日(木)14:00–15:00
場所 北海道大学電子科学研究所 1階会議室
講演者 神原陽一 氏
所属等 慶應義塾大学理工学部・准教授
タイトル 鉄系混合アニオン化合物超伝導体の電子磁気状態相図と応用
概要

我々が2006年に鉄の正方格子が電気伝導を担う超伝導体1を報告して以来、同じく金属的な鉄の正方格子を単位格子中に有する層状化合物において様々な鉄系高温超伝導体2が、世界中で報告され続けている。鉄系高温超伝導体の転移温度(Tc)は、混合アニオン化合物におけるオンセット温度58 Kを記録するに至った。3最近は最も単純な鉄系高温超伝導体であるFeSeを一分子層としたナノ構造体において異常に高いTcが報告され着目されている。4

鉄系高温超伝導体を主題とする原著論文数は、これまでに4500編以上存在するため、個人での現状把握はいささか骨の折れる状況に陥ってしまった。現状は初学者にとっては参入しづらい分野であろうと心配している。しかしながら、10年近くの研究により鉄系高温超伝導体の電子磁気状態相図は銅酸化物超伝導体と非常に良く似た特徴を示すことが明らかになった。普遍的な電子状態相図は複数報告されており、これらの相図の理解を化学的に深めれば、材料科学の立場からの鉄系高温超伝導体の研究準備は完了である。

鉄系高温超伝導体の発見を社会に還元する観点に立った場合、現実的な鉄系高温超伝導体の応用研究は、使用温度領域と使用磁場領域、及び競合する従来の超伝導材料(金属系超伝導体、銅酸化物高温超伝導体)の機能性を勘案すると、限られた温度圧力条件で、微結晶の粒界形状を制御し、バルクの超伝導電流をデバイスにおいても保つためのブレイクスルーを必要としている。

当日は国内外の先端研究事例、自ら求めた電子磁気状態相図、及び今後のブレイクスルーを必要とする鉄系超伝導体の線材応用研究の現状について概説する。

  1. Y. Kamihara, et al, J. Am. Chem. Soc. 128, 10012 (2006).
  2. G. R. Stewart, Rev. Mod. Phys. 83, 1589 (2012).
  3. M. Fujioka, et al, Supercond. Sci. Technol. 26, 085023 (2013).
  4. J. F. Ge, et al, Nature Mater. 14, 285 (2014).
主催 北海道大学電子科学研究所学術交流委員会
共催 応用物理学会北海道支部・エンレイソウの会
連絡先 電子科学研究所 光電子ナノ材料研究分野 海住英生(内9349)、藤岡正弥、西井準治
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