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第55回 北大MMCセミナー

掲載日:
講演会
日時 2016年4月15日(金) 16:30–18:00
場所 電子科学研究所 中央キャンパス総合研究棟2号館 5F北側講義室(北12条西7丁目)
講演者 中岡慎治
所属等 東京大学大学院医学系研究科
タイトル 細菌叢多様性減少と疾患に関する数理研究
概要

腸、皮膚には数百種類もの微生物が常在して細菌叢を形成している。近年、大腸炎や皮膚炎といった免疫系の恒常性破綻が原因で発症する炎症疾患に、腸内・皮膚常在菌の関与が明らかになりつつある。中でも、細菌叢の多様性減少により特定種のみの個体数が増加する現象(dysbiosis)が多くの現象で観察されており、dysbiosisによる過敏性大腸炎やアトピー性皮膚炎発症が示唆されている。

近年では、環境中に存在する微生物群集の構成をメタゲノム解析によって同定できるようになってきた。しかしながら、微生物種同士の詳しい相互作用同定は少数種系のみに限定されており、膨大なデータの解析からみえてくる像との間には乖離が存在する。生態学の分野では、古くから群集理論のみならず、少数系の種間相互作用を記述した理論研究の蓄積がある。生態学で培われた知見をベースに、近年のデータサイエンスで培われた手法を組み合わせることで、常在細菌叢の生態系維持と破綻に関わる機構を理解するための試みが不可欠である。

本研究では、少数系の種間相互作用モジュールが詳しく調べているLotka-Volterra系をベースに、微生物群集の個体群ダイナミクスを記述した方程式系を導出する。腸や皮膚の常在菌生態系に特徴的な、免疫系による制御を環境フィードバックとして組み込んだ系を考え、細菌叢多様性減少が生じるメカニズムと疾患発症との関連を考察する。本研究では、とりわけ先着優位性(早い者勝ち)に基づく種の移入(物理的移動や突然変異)によって形成される側面に注目して解析を進めている。本講演では、メタゲノム解析を援用した種間相互作用推定も加えた数理解析手法と結果について紹介する予定である。

主催 附属社会創造数学研究センター
連絡先 北海道大学電子科学研究所 附属社会創造数学研究センター 人間数理研究分野 長山 雅晴 内線: 3357 nagayama@es.hokudai.ac.jp
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