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第56回 北大MMCセミナー

掲載日:
講演会
日時 2016年4月22日(金) 16:30–18:00
場所 電子科学研究所 中央キャンパス総合研究棟2号館 5F北側講義室(北12条西7丁目)
講演者 上原 隆平
所属等 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科
タイトル 展開図と立体の悩ましい関係 Attractive relationship between solids and their common developments
概要 立体を展開図で表現することは,500年以上前から行われているが,立体と展開図の間の関係は,ほとんどわかっていない.具体的には,多面体Qと多角形Pが与えられたとき,Pをうまく折ってQができるかどうかを判定する一般的な方法は,いまでもわかっていない.(ここでいう展開図とは,必ずしもQの辺に沿って切る必要はない.つまりQの面の中を切り開いてPが得られてもかまわないものとする.)唯一の例外は,すべての面が合同な四面体であり,この条件を満たす四面体の展開図は,ある種のタイリングときれいに対応付けられている.これを除くと,例えばコンピュータで可能な糊付けをすべて試してみるといった愚直な方法しかない. 一方,近年のコンピュータの発展により,こうした「すべて試す」という方法で実際に解ける問題が増えてきた.とはいえ,すべて試す方法は,一般に指数時間かかることが多く,アルゴリズムの工夫なくして,こうした問題を現実的な時間で解くことは難しい. 本セミナーでは,こうした展開図と立体について,講演者の研究グループが得た最近の結果を紹介する.具体的には以下の二つの結果を紹介する予定である.
  1. 正多面体の共通の展開図正多面体は,正4面体・立方体・正8面体・正12面体・正20面体の五つしかない.この五つの中に共通の展開図はあるだろうか.一見すると,とてもありえないように見えるが,「惜しい例」が数多く知られている.講演者のグループは,こうした展開図を生成するアルゴリズムを考案した.実際にプログラムで生成した展開図は,立方体と「ほぼ」正四面体が折れるが,このときの後者の辺の長さの誤差は3×10^{-1800}程度しかない.
  2. 複数の箱が折れる展開図直方体の中には,同じ表面積を持つものがある.例えば1×1×5の箱と1×2×3の箱は,どちらも表面積が22である.これが両方折れる展開図は存在するだろうか.結論から言うと,この場合はコンピュータによる全探索で2263個あることがわかっている.では,3種類の異なる箱が折れる共通の展開図は存在するだろうか?驚いたことに,これも無限に存在することが近年,講演者のグループによって証明された.
上記の結果を得るには,展開図や立体の数学的な特徴づけと,コンピュータによる効率のよい探索をうまく組み合わせることが必要であり,ときにはスーパーコンピュータを利用することもある.こうした数学とコンピュータを活用した研究の魅力について伝えたい.
主催 北海道大学 電子科学研究所 附属社会創造数学研究センター
連絡先 北海道大学 電子科学研究所 附属社会創造数学研究センター 人間数理研究分野 長山 雅晴 内線: 3357 nagayama@es.hokudai.ac.jp
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