単細胞生物（ゾウリムシ）の創発行動および短期的適応能の実験的およびモデル研究

ゾウリムシは水中を遊泳して生活する単細胞生物であり、生体膜の電気生理学的性質と行動（特に繊毛打方向）の間の関係が50年前から調べられている。我々は、既知の生理学的知見を考慮した簡単なゾウリムシ遊泳モデルを構築し、環境との力学的相互作用を介して誘発される適応的行動を考察している。本発表では、まず、ゾウリムシを転回ができないほど細いガラス管に閉じ込めたときに現れる創発行動（長期後退遊泳）について紹介し[1]、これとモデルが同様の状況で示す行動パターンの分岐現象との関連について議論する[2]。さらに、このような狭小空間での経験がその後の行動に短期的な影響を与えうることを示す実験結果[3]とそのモデルについてお話しします。

[1]Kunita,I. et al. (2014) Frontiers in Microbiology 5, doi=10.3389/fmicb.2014.0027

[2]Kuroda,S. et al. (2017) in “Brain Evolution by Design”, ed. Shigeno,S. et al., Springer, pp.3-23

[3]大木開登 (2016)（北海道大学生命科学院生命科学専攻生命融合科学コース 修士論文）