第140回北大MMCセミナー

※当日、体調のすぐれない方は出席をご遠慮願います。

※換気のため一部窓を開けて開催します。体温調節可能な服装でお越しください。

臨床医療において患者の心機能を評価するためにエコーやMRIなどを用いた左心室内の血流の可視化が行われる．この血流中に現れる回転流（渦）構造の形成が心臓のポンプとしての機能をよく表現していると現場の医師の間では経験的に知られているが，それを明確に定義する手段がないために，これまで流れの可視化データをこうした観点で有効に用いることができなかった．一方，講演者の研究グループでは流れ場が生成する粒子の軌道のトポロジカル分類を行うための流線トポロジカルデータ(TFD)解析を開発して，流れのトポロジカルデータ解析を実現しこれを気象や海洋，産業聞き開発などの問題に適用してきたが，このアイデアは渦構造の抽出に有望であると考えられる．しかし，心臓の血流は，心臓の拍動のために移動境界中の流れであり，また，非常に短時間で流れの構造を変化させるため，従来のTFD解析の理論は適用できない．

そこで，本研究では心臓血流のベクトル場可視化画像であるエコーVFMデータに適用可能な新しいTFD解析の理論を構築し，それを実際に計算するソフトウェアを開発することに成功しつつある．

本講演では，このTFD解析の概要を説明した後，今回構築した心血流TFD解析理論といくつかの実データへの適用例について紹介したい．