粘菌に学ぶインテリジェンスの自己組織化原理
EPSON DSC picture
本研究分野では、自律的な生命の最小単位である細胞で創発される複雑・多様な機能を、オルガネラ、高分子、代謝反応などによる物質系での階層的自己組織化として解明することをめざす。裸の原形質である原始生命体の巨大アメーバ:粘菌の特徴を活かし、環境の受容-情報判断-適切な応答という情報過程の研究に取り組んでいる。代謝反応レベルでの行動発現と、遺伝子発現レベルでの形態形成とを具体例とし、特異な受容分子や情報伝達分子の検索・同定に止まらず、細胞の全体性・インテリジェンス・知覚という場の情報を、非線形非平衡場でのパターンダイナミクスとして明らかにしている。
- 振動子集団の挙動と好き・嫌いの判断
- 情報機能をになうリズム素子の自己生成
- 細胞の時間秩序の形成
- 光情報の細胞内情報伝達機構
- 細胞骨格系の動態と細胞形状
- 形態形成における位置情報の生成
真正粘菌変形体による迷路問題の解法。
単細胞生物の真正粘菌変形体を迷路内に這わせると、原形は細い管状になって迷路内にほぼ均一に分布する(図左)。このような状態になったところで出口と入口に餌をおく。するとまず行き詰まりとなっている迷路部分の管は消滅し、つながっている部分の管は太くなる。2つの経路があると、とりあえず2つとも残り、さらに時間が経過すると、2つのうち短い経路の管が残る(図右)。このようにして最終的に、入口と出口を最短コースで結ぶ太い管が形成される。このように粘菌は迷路問題を解くような高度な空間情報処理能力をもつことを明らかにした。
- Keywords
- 真正粘菌, cellular informatics, cellular function, cell behaviour, biological rhythm, morphogenesis, self-organization, spatio-temporal dynamics, true slime mold, myxomycetes, Physarum polycephalum