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研究内容

光子1個で動作するスイッチの集積化に成功

掲載日:
光量子情報研究分野

北海道大学電子科学研究所の竹内繁樹 教授,岡本 亮 助教らは,光の素粒子である光子1個レベルで動作する「非線形光スイッチ」を組み合わせて,光量子コンピューターの基本となる量子ゲート操作を初めて実現しました。

光の素粒子である光子は,量子コンピューターや量子通信における情報の伝達媒体として非常に有力です。ただし,2つの光子を相互作用させる方法の実現が困難でした。この問題に対し,米国およびオーストラリアのグループ(Knill, Laflamme, Milburn)は,半透鏡で生じる量子干渉を利用して,光子1個レベルで動作する「非線形スイッチ」が実現できること,またそのようなスイッチを組み合わせることで,光量子コンピュータが実現できることを示しました。この提案は大変注目されましたが,半透鏡上での光子間の良質な量子干渉が必要となること,また異なる光の経路を,百万分の1ミリメートルの精度で一致させる必要があるなど,その技術的な困難さから,提案後10年間実現されていませんでした。

私たちは,光子源の改良や,独自に開発した特殊な半透鏡,さらに光の干渉装置を工夫することで,コンパクトで非常に安定した実装を実現しました。

その結果として,Knillらの提案した,光量子コンピュータの基本となる光量子回路を実現することに,初めて成功しました。得られた平均ゲート忠実度は0.82と,十分高い量子性を示しました。

今回の成果は,安全な通信を実現する量子暗号通信や,これまでに解けない問題を解く量子コンピューター,また,より少ないエネルギーでの通信を実現する量子情報通信への応用が期待されます。

この研究は英国・ブリストル大学のオブライアン・ジェレミ教授,広島大学のホフマン・ホルガ准教授らと共同で行われました。

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今回実現した光量子回路。

光子1個レベルで動作するスイッチを組み合わせることで光量子コンピューターの基本となる量子ゲート操作を実現

参考文献 : R. Okamoto, J. L. O’Brien, H. F. Hofmann, S. Takeuchi, Proc. Natl. Acad. Sci. 108, 10067 (2011).
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