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光量子情報研究分野
北海道大学電子科学研究所の竹内繁樹 教授、藤原正澄 助教らは、単一の量子ドットから発せられる発光を直接光ファイバに結合する手法を開発しました。
単一分子・単一量子ドット・単一蛍光ナノ粒子などの固体単一発光体からの発光は、量子情報処理における単一光子源として利用可能な事が知られています。単一光子源は光を用いた量子通信の光源に相当するもので、光干渉性の確保・既存の光通信インフラの活用などの実用上、「シングルモード光ファイバ」と結合させる事が極めて重要です。従来、単一発光体からの発光は、高倍率対物レンズによって集められた後、シングルモード光ファイバへ結合されてきましたが、最高でも発光体からの全発光量の1~2%程度しかシングルモード光ファイバに結合する事ができませんでした。
本研究グループは、直径300nmという光の波長よりも細い「ナノ光ファイバ」という光ファイバを作製する事に成功し、その上に単一の量子ドットを配置する事で、量子ドットの全発光量の7.4%もの発光がナノ光ファイバを経由して直接シングルモード光ファイバに結合する事を見出しました。
今回の成果は,安全な通信を実現する量子暗号通信や,これまでに解けない問題を解く量子コンピューター、また、より少ないエネルギーでの通信を実現する量子情報通信や光センシングデバイスへの応用が期待されます。
参考文献: M Fujiwara, K. Toubaru, T. Noda, H.-Q. Zhao, S. Takeuchi, Nano Lett. 11, 4362-4365 (2011).
ナノ光ファイバ上に配置された単一量子ドット。上方の対物レンズからレーザーを照射すると、 シングルモードファイバ端から単一光子が断続的に射出される。