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研究内容

不斉中心を動的に発生させる新しい方法

掲載日:
スマート分子材料研究分野

北海道大学電子科学研究所の玉置信之教授と大学院生のP. K. Hashimは、これまで全く別の分子構造要素と考えられていた中心不斉と幾何異性を直接結びつけることで、分子キラリティーの発生と消失を光で制御することに成功しました。

分子のキラリティー(分子の形をその鏡像と重ね合わすことができない性質)を自在に制御することは、パスツール以来の化学者の夢です。特に、自然界の分子が如何に単一鏡像異性体分子系を達成したかという基本的な問題や、キラル分子の偏光制御材料への応用を考えたとき、キラリティーが様々な刺激に対してどのように変化するかを明らかにすることは重要です。

キラリティーは、分子中に中心不斉、軸不斉、面性不斉、ヘリカル不斉のいずれかの非対称性が存在するときに備わります。そのうち、中心不斉は、一つの炭素に4つの異なる置換基を有するときに見られる不斉です。これまで、中心不斉を動的に発生、消失させるためには、炭素と置換基の間の結合を切ったり、繋げたりするしかありませんでした。本研究グループは、アゾベンゼンという置換基を2つ導入したメタンの誘導体を合成し、化学結合を切ったり、繋げたりするのではなく、アゾベンゼンの幾何異性を光で制御することで、中心不斉の発生と消失を自由に制御することに成功しました。今後は、今回合成された化合物や関連化合物に、キラルな場としても働く円偏光を照射することで、中心不斉の発生だけでなく、一方の鏡像異性体を選択的に発生させることも可能であると考えられます。

本研究は、分子の基本的な性質であるキラリティーの制御に関して新しい方法論を提示すると同時に、自然界の有機化合物の単一鏡像異性体分子系の生成機構や偏光制御材料の新しい可能性を示すものとして期待されます。

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本研究の分子を模式的に表したもの。青はアゾベンゼンのE体、赤はアゾベンゼンのZ体を表す。
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合成した化合物。光と熱による反応で不斉中心の発生を制御可能。EZ-1の鏡像異性体は光学分割できる。

本研究成果は、『Angewandte Chemie International Edition』誌電子版Early Viewに11月4日付で公開されます。 “Induction of Central Chirality by E/Z Photoisomerization”, P. K. Hashim, Nobuyuki Tamaoki, Angew. Chem. Int. Ed., DOI: 10.1002/anie.201104614

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