ページトップへ戻る
研究内容

ナノ結晶中の超高速構造変化をX線レーザーで捉えることに成功

掲載日:
コヒーレント光研究分野
掲載日: 2014-06-16

北海道大学、Southampton大学、理化学研究所(理研)、関西学院大学、京都大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)は、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いて、ナノワイヤー中の超高速構造変化を原子レベルで観察することに成功しました。これは、北海道大学電子科学研究所のMarcus C. Newton助教(現 英国Southampton大学講師)、西野吉則教授、理研放射光科学総合研究センターの田中義人ユニットリーダー(現 兵庫県立大学教授、理研客員研究員)らの研究成果です。

二酸化バナジウムは、温度や光などの外部刺激によって、電気的特性や原子の配置が変化する相転移を起こします。この性質を利用し、スイッチング(電気回路のON/OFF)素子やアクチュエーター(駆動素子)への応用が期待されている材料です。しかし、光刺激による二酸化バナジウムの相転移は、超高速で起こるため、実験的にも理論的にも解析する手法が限られており、その機構はいまだに明らかにはなっていませんでした。

そこで、本研究グループは、10フェムト秒(1フェムト秒は1000兆分の1秒)程度という極めて短い発光時間と、原子レベルの変化を捉えることが可能なコヒーレントなX線であるというXFELの2つの特長を利用して、二酸化バナジウムナノワイヤー中の、過渡的かつ原子レベルの超高速構造変化を観察することに成功しました。なお、観察には、ポンププローブ法とコヒーレントX線回折を組み合わせた、先端的手法が用いられました。

本研究により、XFELが、原子レベルの超高速構造変化を観察できる優れた能力を持つことが示されました。これにより、物質中の原子・分子を超高速動画撮影する画期的な技術へ道が開かれ、強相関電子材料が示す高温超伝導などの多彩な相転移現象の解明に貢献することが期待できます。

本研究成果は,科学雑誌「Nano Letters」(2014年5月14日付)に掲載されました。

“Time-Resolved Coherent Diffraction of Ultrafast Structural Dynamics in a Single Nanowire”, M. C. Newton, M. Sao, Y. Fujisawa, R. Onitsuka, T. Kawaguchi, K. Tokuda, T. Sato, T. Togashi, M. Yabashi, T. Ishikawa, T. Ichitsubo, E. Matsubara, Y. Tanaka & Y. Nishino, Nano Letters 14, 2413–2418 (2014). doi:10.1021/nl500072d
2014-06-16-01

図1 ポンププローブ法とコヒーレントX線回折を組み合わせた本実験の模式図。
2014-06-16-02

図2 遅延時間0ピコ秒と62.5ピコ秒におけるコヒーレントX線回折パターン。
TOPへもどる