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研究内容

細胞集団が同一方向へ整列する現象の制御機構を解明!幹細胞の運命制御にも応用可能

掲載日:
動的数理モデリング研究分野

北海道大学電子科学研究所 動的数理モデリング研究分野の秋山正和助教は秋田大学大学院医学系研究科 細胞生物学講座の山崎正和准教授,鮎川友紀博士研究員,秋田大学生体情報研究センターの佐々木雄彦教授,秋田大学大学院医学系研究科 細胞生物学講座の妹尾春樹教授らとの共同研究により,組織構築に重要な平面内細胞極性(planar cell polarity, PCP)と呼ばれる現象に関する新たな機構を発見しました.

哺乳動物の体表面の毛の流れのパターン,魚類の鱗(ウロコ)の向き,ヒト内耳の有毛細胞の向きなどは,組織を構成する個々の細胞が,細胞の頂底軸と直交する組織平面の特定の軸に沿った方向に極性を獲得することによって生じます.このような極性は平面内細胞極性と呼ばれ,普遍的な現象として知られています.

ショウジョウバエ翅(ハネ)では,翅を構成する細胞から形成される微小な毛(翅毛)が特定の方向へ並びます.近年,分子生物学的なアプローチングにより,ショウジョウバエ翅のPCP に関与する分子群の動態がわかるようになってきましたが,どのような機構により毛の方向性が安定して一方向へ決定されるのか不明でした.

そこで,本研究では数々の実験事実を基に,PCP に関する非常にシンプルな数理モデルを作成し,実験と理論の両面から双方向に検証を行うことにより,PCP の制御機構に関する新たな知見を得ることができました.シンプルな数理モデル系であるという点から,今後様々な生物・組織のPCP 研究に応用可能です.

本研究成果は,2014 年 7 月 3 日(米国時間)に米国科学雑誌「Cell Reports」のオンライン版で公開されました.

URL: http://www.cell.com/article/S2211-1247(14)00477-X/abstract
“Dachsous-Dependent Asymmetric Localization of Spiny-Legs Determines Planar Cell Polarity Orien- tation in Drosophila”, Tomonori Ayukawa, Masakazu Akiyama, Jennifer L. Mummery-Widmer, Thomas Stoeger, Junko Sasaki, Juergen A. Knoblich, Haruki Senoo, Takehiko Sasaki and Masakazu Yamazaki, Cell Reports (2014), http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2014.06.009.

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生物の細胞はなぜ同じ方向を向くのだろう?純粋な疑問だがなかなか難しい問題である.たくさん飼育出来て,遺伝情報も豊富なショウジョウバエをモデル生物として,翅(ハネ)表面の毛の流れに着目した.

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毛の方向に関与する分子のうち,特に重要な分子(Fz 複合体,Stbm 複合体)の働きに着目し,数理モデルを構築した図(a),
(b).計算機シミュレーションを行うと,いかなる細胞数でも全体の毛の方向性がきっちり揃った図(c).

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