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研究内容

安価で生物に優しい軽金属イオンと新しい”相棒”を組み合わせる多孔性軽金属錯体の合成法を発見

掲載日:
ナノアセンブリ材料研究分野

北海道大学 電子科学研究所の野呂 真一郎 准教授らは、安価で生物に優しい軽金属イオンを含む多孔性軽金属錯体の新規合成手法を開発しました。

金属イオンと有機配位子から組み上がる多孔性金属錯体は、触媒材料や物質の分離、吸着材料として使われてきたゼオライトや活性炭に続く次世代の多孔性材料として注目されています。これまで、金属イオンとして重金属イオンが主に使われてきました。一方で、重金属イオンよりも安価で生物に優しい軽金属イオンは多孔性構造を形成するための”相棒”となる有機配位子が限られていたため、その利用が制限されていました。

野呂准教授は、軽金属イオンの”相棒”としてほとんど用いられてこなかった中性有機配位子を用いる新しい合成手法を見いだしました。これまで、中性有機配位子を有する多孔性軽金属錯体はわずかではありますが報告されていましたが、それらは偶然得られたものであり、明確な設計指針の下で合成された例はありませんでした。今回、電荷分離した構造をもつ中性有機配位子と軽金属イオンであるマグネシウムやカルシウムイオンを補助有機配位子の共存下で反応させることにより、中性有機配位子で架橋された多孔性軽金属錯体を狙って合成することに成功しました。

さらに、得られた多孔性軽金属錯体は細孔中に存在する溶媒分子を除去したあとも安定で、室温で二酸化炭素(CO2)とメタンの混合ガスからCO2を高選択的に分離できることを実証しました。これまで明確な設計指針の下、中性有機配位子によって連結された多孔性軽金属錯体の合成例はなく、本合成手法が多孔性軽金属錯体の構造の多様化に極めて有効であることがわかりました。

今後、開発された合成手法を用いて多様な構造をもつ材料合成を行うことにより、安価で安全な多孔性金属錯体の実用化が期待されます。

本研究成果は、2015年1月16日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン速報版で公開されました。

本研究は、北海道大学 大学院環境科学院の水谷 純也 修士、北海道大学 電子科学研究所の中村 貴義 教授、久保 和也 助教、京都大学 福井謙一記念研究センターの土方優 博士、京都大学 iCeMSの北川 進 拠点長、松田 亮太郎 准教授、佐藤 弘志助教、高輝度光科学研究センターの杉本 邦久 研究員、株式会社クラレの犬伏 康貴 研究員との共同研究で行われました。

発表論文: Shin-ichiro Noro, Junya Mizutani, Yuh Hijikata, Ryotaro Matsuda, Hiroshi Sato, Susumu Kitagawa, Kunihisa Sugimoto, Yasutaka Inubushi, Kazuya Kubo, and Takayoshi Nakamura, “Porous coordination polymers with ubiquitous and biocompatible metals and a neutral bridging ligand”, Nature Communications, 6, 5851 (2015).
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図 多孔性マグネシウム錯体の構造とガス分離特性

合成した多孔性マグネシウム錯体では、電荷分離型中性有機配位子bpdo(青線で囲んだ分子)はマグネシウムイオン(緑の球)間を架橋している。また、細孔内部の溶媒分子(黄緑)を取り除いても多孔性構造が保持され、CO2/メタン混合ガスの分離特性を示す。

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