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鉄フタロシアニン系伝導体における巨大磁気抵抗効果と分子設計による制御

掲載日:
講演会
開催日:
日時 平成30年11月15日(木) 16:00 –
場所 北海道大学 電子科学研究所(北キャンパス総合研究棟5号館) 1階 会議室
講演者 松田真生
所属 熊本大学大学院先端科学研究部
演題 鉄フタロシアニン系伝導体における巨大磁気抵抗効果と分子設計による制御
概要

磁場中で電気抵抗が大きく変化する巨大磁気抵抗効果はHDDの磁気ヘッドにも応用されている身近な現象であり、スピンの自由度も活用したエレクトロニクス、いわゆるスピントロニクスにおける代表的な例でもあるが、分子結晶を対象とした報告は多くはない。分子性化合物で巨大磁気抵抗効果を発現させることが困難なためである。その困難さの最大の要因は、分子結晶内でπ伝導電子とd局在スピン間の磁気的相互作用(π–d相互作用)を確保する点にあろう。これを鉄フタロシアニン(Fe(Pc))に注目することで克服した。Fe(Pc)は、単一分子内に伝導電子と局在スピンが共存し、フント結合に類似した強いπ–d相互作用が確保された系を提供し得るのである。これまでに作製したすべてのFeIII(Pc)L2系分子性伝導体(FeIII: d5, S = 1/2, L:軸配位子)において、結晶構造に依らず、巨大な負の磁気抵抗効果の観測に成功しいる[1]

図1. Fe(Pc)(CN)2伝導体の巨大磁気抵抗効果.
分子内π-d相互作用, π電子の電荷秩序, 局在dスピンの反強磁性秩序が複合することで出現する.

講演では、Fe(Pc)L2系分子性伝導体が示す、分子結晶としては類い希な大きさの負磁気抵抗効果について、その発現機構に基づいた分子設計によるπ–d相互作用やFeIIIのスピン状態制御を通した変調の試みも紹介する[2–3]

【参考文献】

  • [1] 松田真生, 田島裕之, 花咲徳亮, 内藤俊雄, 稲辺保, 固体物理, 2007, 42, 123.
  • [2] M. Nishi, M. Ikeda, A. Kanda, N. Hanasaki, N. Hoshino, T. Akutagawa, M. Matsuda, Dalton Trans., 2016, 45, 16604.
  • [3] M. Nishi, R. Ishii, M. Ikeda, N. Hanasaki, N. Hoshino, T. Akutagawa, M. Sumimoto, M. Matsuda, Dalton Trans., 2018, 47, 4070.
連絡先 北海道大学 電子科学研究所 中村貴義 e-mail:tnaka
備考 ご案内【word】
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