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研究内容

マイマイガ用ライトトラップの開発に成功 —休憩施設への飛来虫防止に期待—

掲載日:
人間数理研究分野

ポイント

  • 大型のガを優先的に捕獲するソーラーパネルを実装した持続設置型トラップを開発。
  • 照射角を狭めることで,他の小さな昆虫はなるべく逃がし,大型のガのみを中心に誘虫を促進。
  • 持続可能な開発目標(SDGs)の11.豊かな町作り,15.陸の生物多様性保全に期待。

概要

北海道大学電子科学研究所の西野浩史助教及び堂前愛学術研究員らの研究グループは,フィールドデータをもとに大型のガ(マイマイガなど)を優先的に捕獲し,他の昆虫はなるべく逃がすライトトラップを開発しました。

北海道の森林面積は日本の都道府県で最も広く,夏も短いため,観光シーズン真っ只中に森林昆虫が大量発生します。北海道の道路は森林地帯を通過するため,休憩施設の人工光源に大量のガが飛来します。特に,マイマイガやクスサンは翼長6~10cmと大きく,休憩施設への定着・産卵することがあり,利用者の苦情のもとになってきました。休憩施設には多くの利用者が集まるため,農薬の散布を控える必要があり,「環境にやさしい飛来虫防除法の開発」が望まれていました。

使用した光源は,光波長だけでなく,照射角やトラップ形状を最適化したうえで,ソーラーパネルを実装することで,持続使用を可能にしました。マイマイガの人工照明への飛来,施設への定着は全国的な問題となっており,本トラップは環境低負荷型のマイマイガ防除の一助となることが期待されます。

なお,本研究成果は2022年5月2日(月)公開のZoologicalScience誌にオンライン掲載されました。

トラップで捕獲された昆虫をチェックする様子。2018年の連続台風(台風20号・21号)直撃,北海道胆振東部地震(9/6)でも損傷はなかった。

【背景】

北海道の森林面積は日本の都道府県中最も広く,短い夏の間に森林昆虫が大量発生します。特に,マイマイガやクスサンなどの大型のガは,道路沿線の休憩施設へ多数飛来し,定着・産卵をおこすことで,利用者の苦情のもとになってきました。そこで,休憩施設への大型のガのよりつきを減らす狙いで,誘引性の高いライトトラップを作成することを目的としました。これまで,昆虫の色(光波長)への嗜好性に着目したトラップは多く作成されてきましたが,光源照射角や捕獲部分の形状にまで工夫を凝らしたトラップは少ないのが現状でした。

【研究手法】

2016年から2018年の7~9月の有翅昆虫の出現時期に,光波長(365-535nm)や照射角(0-120度)の異なる光源(2021年12月3日付けのプレスリリースリリース参照:)を道路沿線に設置することにより,昆虫の光源定位行動やトラップされる昆虫種・数を精査しました。フィールドデータをもとに,毎年少しずつトラップの仕様変更を進め、大型のガを捕獲しやすいトラップを作成しました。

【研究成果】

まず,光の形状による影響を調べるため,照射角の違いによる誘引性を評価しました。その結果,コリメーターレンズで照射角を絞った狭角光源(10度)の方が広角光源(40度)の5倍以上のマイマイガを集めました(図1)。また,背景の衝突板に夜光塗料を塗布すると,光源周囲が広くぼんやりと光りますが,この状態では期待に反してガが捕獲されにくくなることがわかりました。以上の結果は,飛翔昆虫が明暗コントラストの強いエッジ付近を目指して定位とする,弘中―針山によるエッジ注視仮説*1を支持するものです。実際に,マイマイガは視覚的コントラストの強いオブジェクトや林縁に定位する習性を持ちます。

トラップの光源として,大型のガの誘引効果が最も高い発光ダイオード(380nm+490nm)を実装するとともに,その光源は狭角仕様(10度)としました。大型のガは光源背後の衝突板に当たると,自重により,返し付きの容器に落下しますが,小さな昆虫は逃げることができます(図1)。また,電源はソーラーパネル(p.1図左)による発電により,夏季の2ヶ月にわたる継続使用が可能でした。

【今後への期待】

本トラップは収量の大きなトラップですが,仕様をコンパクトにすることにより,家庭用の害虫トラップにも応用できる可能性を秘めています。北海道では11年周期で起こるとされるマイマイガ大発生が近づきつつあり,トラップの効果確認とともに,さらなる仕様のブラッシュアップが期待されます。

【謝辞】

コニカミノルタ株式会社からLEDの放射照度と光波長測定のために分光放射照度計(CL-500A)を無償貸与して頂きました。また,ノブオ電子株式会社から分光放射照度計(CP160)を無償貸与していただきました。

論文情報

論文名
Management of nuisance macromoths in expressways through academic-industrial collaboration: light trap designed on the basis of moths’ preferences for light attributes(高速道路へのマイマイガ低減を目指す産学連携研究:光属性に着目したライトトラップ)
著者名
Keigo Kurihara1, Toshiaki Ito1, Yukihisa Sato1, Takanori Uesugi2, Satoru Yamauchi1,Masahiro Komatsu2, Susumu Saito2, Mana Domae3, Hiroshi Nishino31ネクスコエンジニアリング北海道,2東日本高速道路株式会社,北海道支社,技術企画課,3北海道大学電子科学研究所)
雑誌名
Zoological Science(動物学の専門誌)
DOI
10.2108/zs210082
公表日
2022年5月6日(金)(オンライン公開)

お問い合わせ先

北海道大学電子科学研究所 助教 西野浩史(にしのひろし)
TEL 011-706-2596
メール nishino[at]es.hokudai.ac.jp
URL https://www.es.hokudai.ac.jp/labo/nishino/index.html

配信元

北海道大学総務企画部広報課(〒060-0808札幌市北区北8条西5丁目)
TEL 011-706-2610
FAX 011-706-2092
メール jp-press[at]general.hokudai.ac.jp

【参考図】

図1.広角光源(40度)と狭角光源(10度)で大型のガが集まる仕組みのイメージ(上段)
実地試験では狭角光源の方が5倍以上のマイマイガがトラップにかかった(下段)

【用語解説】

*1エッジ注視仮説 … 昆虫の走光性のメカニズムを説明する仮説のひとつで,移動中の昆虫は光と周囲が作り出す視覚的エッジに向かって定位すると考える。弘中満太郎博士(石川県立大学)と針山孝彦博士(浜松医科大学)によって提唱された。

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